和太鼓祭座CD発売までの裏話 −その1



 このページを開いてくださってありがとうございます。

 以下、当時のメモをもとに、経過やら様子やらを書き付けようとおもいます。
わたしなりの曲解説もしてみました。最後までおつきあいただければ・・・。

 わたし(広瀬)の友人に、琴・三味線奏者の長谷川慎さんという方がおられま
す。東京芸大邦楽科の出身で気鋭の演奏家です。その彼から、CD収録をして
もらえないだろうかという依頼を受けた、というのが今回の祭座CDにつながる
きっかけになります。
 最初は軽い依頼でした。つまり長谷川さんがメンバーになっている邦楽合奏グ
ループ(ヤマトアンサンブル)があり、すでに2枚のCDをイギリスから発売し
ている。ついてはメンバーの一人でイギリス人尺八奏者、本業はフルート奏者
(英BBC交響団)が今年演奏旅行をしに来日するので、それを機会に日本でレ
コーディングをしたい、というのが要望でした。
 この時点で2001年の6月。詳しいことは後日ということで、その場でわか
れました。ここではまだ和太鼓の話はでていません。
 さて7月末になりました。この間までに、イギリス人尺八演奏家(リチャード・
スタッグさん)の来日は11月で、収録は12月になりそうだとは聞いていまし
た。私は私で、録音家の選定に入らなくてはなりませんでした。さらにホールを
決めなくてはなりません。なぜなら年末のホール予定は競争が激しく、安くて
使い勝手のいいホールは、すぐに埋まってしまいます。
 仕事柄、プロの録音家、音響家さんとはおつきあいがあるのですが、どうもこ
の仕事は録音会場費に費用がかかりそうだという感触があり、さらに録音を済
ませた後の調整(マスタリングと言います)までしなくてはならない様子があった
ので、自ずと範囲は限られてきます。つまり通常営業している職業録音家さん
に、通常値段ではお頼みできないだろうなということです。さらにクラシックや
邦楽を経験なさってる方であれば、と希望は際限なく広がるのですが実際は
・・・・。
 録音家さんは、ふとしたことからお迎えすることが出来ました。私は仕事がら
業務音響関係のメーリングリストに参加しているのですが、そこでクラシック収
録関係とデジタルマスタリング操作のお話しを活発にされ、演奏家の姿勢を
尊重してくれるような作業をなさっている様子が伝わってくる方がおりました。
早速かくかくしかじかなのだが、スタッフに加わってくれないだろうかとメールを
したところ、快諾してくださったのが、今回録音にお迎えした池田高史さんです。
あとでお会いして、わたしもよく知っているグループを収録していたりと、大変
な偶然ですが、そういう出会いがありました。以後偶然がさらに続き、それが和
太鼓祭座へとつながります。

 まだここでは和太鼓の話は出てきていません。しかしある日長谷川さんから電
話があります。「実はイギリスのプロデューサーが、せっかく日本で収録するの
だから、来年はワールドカップもあることだし、もう一枚和太鼓を収録してくれ
ないだろうかと言ってるんだけど、できないだろうか?」という内容でした。こ
の時点で8月にすでに入っていました。収録の12月までいくらもありません。
 でもこうなったら動き出すほかありません。日本文化を海外から発信できるな
ら、ここで機会を閉ざすのは私的な範囲をはるかに超えて、圧倒的な損害であ
ると考えました。つまり、この時点で和太鼓収録に参加してくれるグループ探し
が始まりました。と、同時に二つのグループのプロデューシングすることになっ
たのです。
 そしてここにもいい偶然が作用してました。私は録音家さんを、生楽器の経験
があることを重視しました。ですからオーケストラ収録経験がある池田さんに
注目したのですが、和太鼓もオーケストラに負けないくらいの大音響を出しま
す。録音というのは、経験がものを言う仕事の一つです。これは本当にラッキー
でした。

 和太鼓探しはまず自分の周辺から考えてみました。放送音楽収録に参加して
くれたあのグループ、招待された披露宴に出演されたご夫婦の太鼓奏者。言え
ばダレでも知ってるロックバンドのドラマーさんにも心当たりがないでもないと言
います。長谷川さんも仕事柄、プロの和太鼓奏者に心当たりがあると言ってい
ます。
 しかし、です。和太鼓の演奏傾向はどうするのか、という基本路線をまず決め
なくてはなりません。それと同時に、日本の和太鼓事情もリサーチしはじめまし
た。その際、インターネットの福井県三国太鼓のKuniさんのTaikoWEBページ
は、大変参考になりました。
 いろいろ考えて、こういう方針を立ててみました。

 海外の人が聞くのだから、飽きさせてはいけない。だからバラエティの富んだ
レパートリーを多く持つグループが欲しい。しかも太鼓だけではなく別の楽器も
絡んでくれるとありがたい。また伝統的リズムだけではなく、多様なリズムを複
雑に組み合わることができるとなお望ましい。さらにもちろん、上質な演奏を恒
常的にこなしていて統率が取れていること、というのが加わります。これはレコ
ーディング現場で準備などに時間がかかると、演奏の好機を逃してしまうとい
う、主に制作側の事情ですが。

 以上のようなことを念頭に太鼓グループ探しが始まりました。ちょうど夏でし
たから、夏祭りに和太鼓を呼ぶようなイベントを調べて、出かけてみることにし
ました。いままでも太鼓は普通の人よりは聞いていたつもりでしたが、とにかく
耳への蓄積をしなくてはなりません。CDもいくつか買ってみました。
 業務音響関係のメーリングリストにも心当たりがないか、投稿を投げて見まし
た。プロがそうした仕事に接してれば、情報を貰えないかと思ったのです。また、
前述の三国太鼓のKuniさんにも、恐る恐るメールを差し上げて、掲示板で奏
者募集の投稿をしてもいいだろうか? というお願いもして、快諾もいただいて
いました。

 この間、並行していろいろなことが進んでいました。和太鼓のイベントにでか
け、アマチュア和太鼓グループの練習スケジュールがタウン誌に投稿されてい
たので、太鼓なら音は外まで漏れてるだろうと聞きにも行きました。知人の
テレビディレクターに頼んで、ある太鼓保存会を収録したドキュメンタリーも見
せてもらいました。
 いろいろ聞いてわかったこともあります。太鼓をやっている方には非常に失礼
ですが、同じ音色と同じリズムを繰り返す演奏は、ライブで見るのならともかく
聞いてるだけでは集中するのが難しいという点。和太鼓に慣れた日本人ならば
まだしも、今回のCDのマーケットは全世界です。これは熟慮すべき問題だと
思いました。
 これはリズムの質に関することですが、リズムが完璧に揃っていることだけが
上質ではない、という事も感じました。タイトなリズムを一糸乱れず刻み続ける
のも飽きられる。揃ってることだけが至上ではなくて、ダルなリズム、アウトな
リズムもないと、熱が伝わらないのではないかということでした。ガスの炎の
ような管理された燃料の炎ではなく、もうもうと立ち上がった炎を、このとき
イメージしました。

 さらに奏者募集の文案も練りました。ここまで感じたことを募集文章に盛り込
んで掲示板に書かせて貰ったりもしました。一方、間接的にツテのあった奏者
さんとの折衝も伝わってきます。ある方は、とにかくスタッフもホールも指定さ
せて欲しい、それならOKということでした。これはこちらでスタッフがすでに構
えてあったので残念ながら、ということになりました。
 応募に対する反応も返ってきました。結構な数です。折り返し、こういう演奏
を求めていて、さらに英語で曲目解説を用意できること、対外的演奏経験が
豊富なことという項目を盛り込んで、細かい要項をお送りしました。しかし、
最初の反応は良くても、これに対する反応は鈍いものでした。この時点では
その理由はわかりませんでしたが。
 この間、インターネットは、常に連絡手段で使っていましたので、当然和太鼓
グループのリサーチにも使います。リンク集や検索エンジン、掲示板などを頼り
にあちこちページを見て回りました。外国の和太鼓ファンが主宰している掲示板
などもつたない英語で読んでみたりもしました。鼓童はやっぱり人気がありまし
たね。和太鼓祭座のページを初めて見たのも、この頃です。

 このあたりから偶然がゆっくり動き出します。
 知人友人からもメールが入ります。音楽エージェントをしている日系米人から
は、横田基地のイベントで和太鼓叩いてる連中がいるぞ、と教えられました。
 友人の歯医者さんからは、「うちの嫁さんがPTAの行事で、八王子の和太鼓
チーム呼んだらしいぞ」とも言ってきます。たまたまビデオ音楽の仕事で出た先
では音響効果さんが、友人の音響が和太鼓チームの音を担当してたけど、素
材の名前(チームの名前という意味です)問い合わせてあげようか? と言って
くれます。
 件の歯医者さんが、「ここを見て頼んだようだ」とURLを再びメールしてく
れました。あれ、見た覚えあるなあ。詳しく読んでみます。え、横田基地で演
奏?映画の劇中音楽に参加ともある。
 もちろんこの間いろいろなことが並行してますから、ここまで直線的ではあり
ませんが、でもわたしの周辺3カ所から、ある特定グループを指し示す偶然とい
うのはどうしても印象に残ります。お察しのように、ここが和太鼓祭座だったわ
けです。和太鼓祭座のホームページは、情報を外に出そうとするタイプのもの
で、その点、リサーチする私にとってはありがたい構成であったという偶然も、
加えるべきでしょうか。

 私は偶然にはあまり頼りません。でも偶然が重なるような「運」は実力のうち
だとも思っています。実はこの頃、祭座の他に聞いてみたいなというグループ
が一つありました。とにかく聞いてみるしかありません。
 祭座のページには演奏予定と練習予定が出ています。しかも掲示板まであり
ます。早速、「見学したいのですが」と書き込んでみました。なんだか太鼓好き
が単に聞きに行くみたいなニュアンスなので、ちょっと後ろめたさもあったのです
が(笑) この時点で9/23日になっていました。

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